北斎さんの富士山 〜復刻版で見る「富嶽三十六景」〜 (22)【PR】
連載「北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜」は、アダチ版画研究所が制作した復刻版で、北斎の「富嶽三十六景」全46図を毎週2図ずつご紹介する企画です。前回の記事はこちら≫
作品No.17 「東海道品川御殿山ノ不二」
「富嶽三十六景」の中では珍しく、描かれた季節がはっきりと特定できる作品。桜の花咲く御殿山で、人々がお花見を楽しんでいます。扇を手に、踊るように歩く人。敷物の上で、ほろ酔いの人。春先の浮き立つ心地が伝わってきますね。
■ カクダイ北斎
ひょろりと背の高い御殿山の桜の木。眼下には高輪の海が。控えめなピンク色の花越しに、遠く富士山を望みます。
■ ふじさんぽ
御殿山の名前の由来は、寛永(1624-1644)の頃に徳川将軍家が同地に建てた御殿。寛文(1661-1673)の頃から奈良県吉野の桜が植えられ、桜の名所となりました。その後、元禄15(1702)年2月の大火で御殿は焼失してしまいますが、8代将軍・吉宗の時代に桜が整備され、多くの人が花見に訪れる場所に。今回のふじさんぽスポットは、今も御殿山の名前を残す都会の小さなオアシス「御殿山庭園」。
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作品No.40 「甲州三嶌越」
画面中央には、視界をさえぎる巨木。旅人たちが、幹の太さを測ろうと、手を繋いで回り込んでいます。藍と墨の寒色系でまとめられた作品ですが、旅人たちの微笑ましい姿のせいか、眺めているとほっと心が和みます。
■ カクダイ北斎
デフォルメされた背景に対して、北斎は手前の巨木の質感や、旅人の無邪気な表情までを事細かに描きこんでいます。なんだか話し声まで聞こえてきそうですね。
■ ふじさんぽ
北斎が描いた三島越とは、山梨県の富士吉田市から静岡県の三島市へと抜ける、富士山の東側を通る道を指しているようです。鎌倉往還(古代東海道)とも言われます。今回のふじさんぽスポットは、タイトル通りの甲州(山梨県)ではないのですが、この道の途中にある、富士山に一番近い道の駅「道の駅 すばしり」。この作品のような大きな富士山が見られます。ちなみに、画面中央の巨木のイメージソースは、笹子峠にある樹齢1000年を越える矢立の杉(杉良太郎さんの歌にも歌われていますね。)ではないかと言われています。
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editor's note:北斎の260回目の誕生日を記念してスタートした本連載もいよいよ残すところ一回となりました。晩秋から春先にかけての約5ヶ月、なかなか季節感の演出が難しかったものの、最終回目前で、東京の桜の見頃に合わせて「東海道品川御殿山ノ不二」の桜をご紹介できました。いよいよ次回は登頂。最後までお付き合いください。
※ 葛飾北斎の「葛」の字は環境により表示が異なります。また「富嶽三十六景」の「富」は作中では「冨」が用いられていますが、本稿では常用漢字を採用しています。
文・「北斎今昔」編集部
提供・アダチ版画研究所
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