北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜 (4)【PR】
連載「北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜」は、アダチ版画研究所が制作した復刻版で、北斎の「富嶽三十六景」全46図を毎週2図ずつご紹介する企画です。前回の記事はこちら≫
作品No.19 「神奈川沖浪裏」
「The Great Wave」の名前で世界的に知られる北斎の代表作。スマートフォンなどで使用する絵文字にもなっていて、「浮世絵」や「北斎」を知らない人でも、この絵はきっと見たことがあるはず。長年にわたり水流の表現を探究してきた北斎の努力が、この一枚に見事に結実しています。黄金比や螺旋構図などの理知的な画面構成、また自然の脅威と人間の対比など、さまざまなテーマで読み解くことのできる、永遠の名画です。
■ カクダイ北斎
ダイナミックな高波の遥か彼方に鎮座する霊峰、富士。鴇(とき)色とグレーのグラデーションによって表現された不穏な雲行きの空の下、悠然たる富士の姿は、小さいながらも圧倒的な存在感を放っています。
■ ふじさんぽ
北斎はこの「神奈川沖浪裏」を描くまでに、迫り上がる高波の姿を何度も絵画に描いてきました。中でも、現在の神奈川県横浜市本牧(ほんもく)の海を描いた「賀奈川沖本杢之図」は本図の原型ともいうべき作品で、本図の「神奈川沖」も、本牧界隈ではないかという説があります。そこで今回は本牧埠頭にある「横浜港シンボルタワー」をふじさんぽのスポットに設定させていただきました。横浜ベイブリッジから車で15分弱。晴れた日には、地上36.5mの展望室から富士山も見えます!
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作品No.6 「穏田の水車」
水車小屋のある長閑な田園風景。他に目立った建物などもなく、平野の向こうに富士山の姿がよく見えます。周囲がシンプルな分、複雑な水車の構造と、水流の表現が際立ちます。人間は、炎のゆらぎと水の流れを見飽きないと言いますが、北斎の浮世絵の水は、本当にずっと見ていられますね。
■ カクダイ北斎
前述の「神奈川沖浪裏」からも分かる通り、水流の表現にこだわりを持っていた北斎。線と色面の要素が強い木版画によって、水という不定形な難題を見事に水車の水の流れや勢いを表現しています。
■ ふじさんぽ
何もない田園の風景ですが、実はここは現在の東京・原宿。穏田(おんでん)は渋谷区神宮前1丁目および4〜6丁目にあたり、現在も商店会にその名前が残っています。もともとは「穏田」ではなく「隠田」で、地名の由来は、忍者の隠れ里だったからという説もあるのだとか。キャットストリートの愛称で親しまれている原宿の通りは、渋谷川という川の跡で、かつては北斎が描いたような水車があったそうです。今回のふじさんぽスポットは、そんな町の移り変わりを見つめてきた土地の神さま、穏田神社にさせていただきました。
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editor's note:「神奈川沖浪裏」がどこから描いた作品かについては諸説ありますが、今回ふじさんぽのスポットに選んだ本牧は、昔ながらの景勝地。今の時期は美しい紅葉が楽しめます。また、隠田神社から徒歩圏内には、浮世絵専門美術館である太田記念美術館があり、現在「ニッポンの浮世絵」展を開催中。
※ 葛飾北斎の「葛」の字は環境により表示が異なります。また「富嶽三十六景」の「富」は作中では「冨」が用いられていますが、本稿では常用漢字を採用しています。
文・「北斎今昔」編集部
提供・アダチ版画研究所
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