幅広い世代のコミュニケーションツールとして普及しているアプリ「LINE」。数あるメッセンジャーアプリの中でもダントツのシェアを誇る理由の一つは、さまざまな気持ちのニュアンスを伝えることのできる「LINEスタンプ」機能にあるのではないでしょうか。自分の好きなキャラクターや世界観のスタンプを気軽に送信でき、逆に相手の趣味やセンスを知ることもできますよね。浮世絵ファンの皆様にぜひ使っていただきたい浮世絵モチーフの「LINEスタンプ」をご紹介します。
広重おじさんがいっぱい! 中山道広重美術館の「広重旅人スタンプ」シリーズ
最初にご紹介する浮世絵モチーフのLINEスタンプは、岐阜県恵那市の中山道広重美術館が販売している「広重旅人スタンプ」。2023年2月現在、3種を展開しています。「広重旅人スタンプ」のモチーフになっているのは、広重の浮世絵の中に描かれた人物たち。「-東海道編-」では広重の代表作「東海道五拾三次」から、「-木曽街道編-」では同館が誇る希少な全図コレクション「木曽海道六拾九次」から、風景の片隅に描かれた名もなき旅人たちが選ばれています。
スタンプになっている人々は、役者絵や美人画の主役を張るような有名人ではありません。「袋井」のおじさんや「藤川」のわんこが分かったあなたは、相当な浮世絵通。人選は、美術館スタッフ皆さんで意見を出し合って決めたとのこと。メッセージとの組み合わせも絶妙で、浮世絵作品の細部に至る愛をひしひしと感じます。
海外を対象にしたスタンプの販売申請の際には、ふんどし姿のおじさんのスタンプに許可が降りなかった(おしりが見えているため?)といったエピソードもうかがいましたが、広重の浮世絵に登場する素朴な人々の姿は、このLINEスタンプを通じて、きっと多くの人に伝わるはず。名画のバイプレイヤーであるおじさんたちに特化した「広重旅人スタンプ-おじさん編-」は、実に良い味を出しています。
中山道広重美術館のこのユニークなLINEスタンプの第一弾が発売されたのは、ちょうど巷でおじさんブームが巻き起こっていた2017年。同館では、広重作品の中に登場するおじさんたちを「広重おじさん」と呼んでおり、同年度には「ゆる旅おじさん図譜」と題した企画展も開催。かわいいおじさんグッズも発売しました。(おじさんグッズは中山道広重美術館のWebミュージアムショップからも購入可能。品切れの一部商品は近日再入荷予定とのこと。)いち早く浮世絵の中のチャーミングなおじさんたちを発見し、おじさんブームの到来を予見していた中山道広重美術館、恐るべしです。
「広重おじさん」はその後も同館のマスコット的な存在として多くの人に愛され、2021年には企画展第2弾の「ゆる旅おじさん図譜 リターンズ」を開催。さらに今年は東京進出(※中山道広重美術館の企画展のコンセプトをもとに、太田記念美術館が新たに「広重おじさん図譜」という名称で企画展を構成。)と活動を広げています。
使うほどにジワジワ愛着がわいてくる「広重旅人スタンプ」。広重おじさんの魅力をぜひお友だちにも広めてください。
江戸時代から続くゆるキャラDNA 太田記念美術館の「虎子石」スタンプ
次にご紹介するのは、東京・原宿の浮世絵専門美術館、太田記念美術館が販売している「虎子石スタンプ」です。twitterフォロワー数18.8万人(2023年2月現在)を誇る太田記念美術館のアカウントのアイコンになっているのが「虎子石」。漬物石の妖怪のよう(?)なこの生き物は、実は同館が所蔵する江戸時代の浮世絵に、実際に描かれているんです。絵師の歌川芳員が独自のアレンジを加えて描いたものですが、そもそもは大磯のお寺に伝わる由緒ある石です。
【LINEスタンプ発売中】太田記念美術館では、公式twitterのアイコンにもなっている不思議な生き物「虎子石」のLINEスタンプを発売中です→https://t.co/6cfwSd0b1h
— 太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art (@ukiyoeota) January 12, 2023
虎子石がゆるく日常に溶け込んでくれる、味わい深いスタンプです。虎子石について詳しくはこちらから→https://t.co/6DOMuK9FPh pic.twitter.com/QrR1WLv4TA
「虎子石スタンプ」は、浮世絵に描かれた虎子石をもとにして、ほのぼのタッチのイラストになっています。元ネタを知らない方にとっては、なんのキャラクターなのかさっぱり分からないと思いますので、ぜひスタンプを送信した相手に、大磯の虎子石の話や、太田記念美術館のtwitterのことを語ってください。
現在のご当地キャラの発想に意外と近い「虎子石」。江戸の浮世絵師たちが現代に生きていたら、LINEスタンプのクリエイターとして、スタンプを販売していたかも知れませんね。
コミカルで使いやすい『北斎漫画』、猫好きに贈る国芳の「猫飼好五十三疋」
浮世絵のLINEスタンプを販売しているのは美術館・博物館だけではありません。ここではさらに企業が販売する浮世絵モチーフのLINEスタンプをご紹介します。
大阪・心斎橋の大阪浮世絵美術館も、LINEスタンプを販売しています。同館のLINEスタンプのモチーフは、みんな大好き『北斎漫画』! 元々コミカルな描写が多く、現代のイラスト集のような『北斎漫画』は、LINEスタンプと相性ばっちりです。犬や猿といったかわいい動物モチーフもあり、相手を選ばず使えそう。
そして、浮世絵ポータルサイト「北斎今昔」が運営する雑貨ブランド「浮世絵贔屓」もLINEスタンプ「国芳の浮世絵猫スタンプ」を2種販売しています。モチーフは歌川国芳の猫づくしの浮世絵「其まま地口猫飼好五十三疋」より。オーソドックスな挨拶を集めた「日常会話編」と、親しい間柄の人に送る「お遊び編」があります。現代の職人が制作した復刻版浮世絵のスキャン画像を使用しているため、色が明るくポップな雰囲気。
LINEスタンプはLINE STOREで1セット250円前後で購入でき、お友だちにプレゼントすることもできます。身近なところから浮世絵ファンの輪を広げていくのにぴったりのコミュニケーションツール。ぜひ日常のやり取りの中に、世界に誇る日本の文化、浮世絵の要素をプラスしてみてください。ここでご紹介した以外にも、さまざまなクリエイターが、浮世絵をモチーフにした面白いLINEスタンプを販売していますよ。
◆中山道広重美術館
・広重旅人スタンプ-東海道編-
・広重旅人スタンプ-木曽街道編-
・広重旅人スタンプ-おじさん編-
◆太田記念美術館
・太田記念美術館「虎子石」スタンプ
◆大阪浮世絵美術館
・北斎漫画★毎日使える便利な浮世絵スタンプ
◆浮世絵贔屓@アダチ版画
・国芳の浮世絵猫スタンプ【日常会話】改訂版
・国芳の浮世絵猫スタンプ(お遊び編)
※本稿でご紹介したLINEスタンプは、「浮世絵贔屓」のスタンプを除き、LINEスタンプ プレミアム(定額制のスタンプ使い放題プラン)の対象となっています。
文・「北斎今昔」編集部
- 記事をシェア:
- Tweet