北斎さんの富士山 〜復刻版で見る「富嶽三十六景」〜 (14)【PR】
連載「北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜」は、アダチ版画研究所が制作した復刻版で、北斎の「富嶽三十六景」全46図を毎週2図ずつご紹介する企画です。前回の記事はこちら≫
作品No.9 「御厩川岸より両国橋夕陽見」
隅田川の夕間暮れ、御厩川岸(おんまやがし)から両国橋を眺めた作品です。薄紅色の空の下、富士山や両国橋のシルエットが遠くに浮かび上がります。近景の川面の流線の動きと、影絵のような遠景の静けさの対比の妙。
■ カクダイ北斎
船頭の視線の先には、藍色の富士山のシルエット。輪郭線を用いない遠景は、「富嶽三十六景」のシリーズの中でも特異な表現で、どこか幻想的です。
■ ふじさんぽ
御厩川岸(おんまやがし)は現在の東京都台東区蔵前。地名は幕府の馬小屋があったことに由来します。明治時代になって厩橋が架けられるまで、人々は御厩の渡しの舟で隅田川を渡っていました。今回のふじさんぽスポットは、この御厩の渡しのあった辺り。北斎は絵本『隅田川両岸一岸』でも、この界隈を描いていて、川沿いの遊歩道脇には「首尾の松の釣船 椎木の夕蝉」の図を紹介する小さなモニュメントが設置されています。
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作品No.22 「相州江の島」
湘南の海に浮かぶ小島、江の島。江戸時代には、江の島の弁財天へ参詣する人が増え、行楽地として発展しました。うららかな春の一日、水平線の彼方に富士山の姿がくっきりと見えています。
■ カクダイ北斎
干潮時には、片瀬から徒歩で渡ることができた江の島。北斎の作品の中には、江の島詣の人々が細かく描きこまれています。参道の雰囲気は江戸時代からずっと変わっていませんね。
■ ふじさんぽ
江島神社のご祭神は、三姉妹の女神さま。この女神さまたちが仏教との習合により、江島弁財天として信仰されるようになりました。今回のふじさんぽスポットは「江島神社」。なお、江の島から電車を乗り継いで1時間ほどの場所にあるのが、藤沢市藤澤浮世絵館。東海道の藤沢宿、江の島を題材とした浮世絵や、関連資料を展示しています。
※ 藤澤浮世絵館は、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、2月8日まで臨時休館しています。休館中も、展覧会の内容を同館公式サイトやSNSを通じて発信されていますので、ぜひご覧ください。
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editor's note:今回ご紹介した両国橋と江の島は、北斎以外にも多くの絵師が描いてきた浮世絵の定番の画題。他の絵師の作品と比べていただくと、より北斎の着眼点の独自性や卓越した描画力がおわかりいただけると思います。
※ 葛飾北斎の「葛」の字は環境により表示が異なります。また「富嶽三十六景」の「富」は作中では「冨」が用いられていますが、本稿では常用漢字を採用しています。
文・「北斎今昔」編集部
提供・アダチ版画研究所
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