北斎さんの富士山 〜復刻版で見る「富嶽三十六景」〜 (10)【PR】
連載「北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜」は、アダチ版画研究所が制作した復刻版で、北斎の「富嶽三十六景」全46図を毎週2図ずつご紹介する企画です。前回の記事はこちら≫
作品No.27 「凱風快晴」
富士山を描いた作品は古今東西数多あれど、おそらく最も有名なのは、この北斎の赤富士ではないでしょうか。威風堂々、まさに王者の品格。
■ カクダイ北斎
名作・赤富士の簡潔な構図を支えているのは、緊張感のある北斎の描線。細かく震えるような独特の筆が、パターン化しがちな富士山の姿に生命力を吹き込んでいます。
■ ふじさんぽ
北斎の赤富士は、どこから見た富士山なのか。これには諸説あり、特定されていません。「富嶽三十六景」全46図中、北斎はこの「凱風快晴」含む3図にだけ、作品名に地名を入れませんでした。地域を特定しないことで、より多くの人にとっての「我らが富士山」になったようにも思います。もはや日本人の心象風景に近いのかもしれませんね。ということで、今回のふじさんぽスポットは「富士山」!
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作品No.2 「江都駿河町三井見世略図」
駿河町の名前は、駿河の国の富士山が見えたことに由来します。この日本一の山を眺める通りの両側に立派な店を構えていたのが、江戸随一の呉服問屋・三井越後屋、つまり現在の三越です。凧も上がって、なんとも景気の良い作品です。
■ カクダイ北斎
北斎に限らず、駿河町を描いた浮世絵は、お正月の風景を描いているものが多いのが特徴です。きっとお正月のこの通りは、江戸市中でもひときわ華やかだったのでしょう。「寿」の文字の凧が青空に上がっています。
■ ふじさんぽ
江戸時代、呉服業界では画期的だった正札どおりの現金取引を採用した三井越後屋。看板には「現金/無掛値(現金掛け値なし)」の文字が見えます。その創業は1673年。1904年に株式会社三越呉服店を設立し、日本初の百貨店となり現在に至ります。今回のふじさんぽのスポットは、そんな長い歴史をもつ「日本橋三越本店」。1935年に完成した本館は、現在、国の重要文化財に指定されています。
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editor's note:新年あけましておめでとうございます。北斎の260回目のお誕生日(2020年10月31日)の前日からスタートした毎週金曜日更新の本連載。10回目がちょうど元日となりました。そこで今回は、もはや日本人のおめでたいアイコンとして定着している「赤富士」と、浮世絵の正月風景の定番だった「三井見世」を選ばせていただきました。本年も「北斎今昔」をどうぞよろしくお願いいたします。
※ 葛飾北斎の「葛」の字は環境により表示が異なります。また「富嶽三十六景」の「富」は作中では「冨」が用いられていますが、本稿では常用漢字を採用しています。
文・「北斎今昔」編集部
提供・アダチ版画研究所
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