北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜 (8)【PR】
連載「北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜」は、アダチ版画研究所が制作した復刻版で、北斎の「富嶽三十六景」全46図を毎週2図ずつご紹介する企画です。前回の記事はこちら≫
作品No.43 「甲州犬目峠」
青い空に緑の丘。季節は初夏でしょうか。伸びやかな描線と作品の随所に用いられているボカシ(グラデーション)によって、はてしない空間の広がりを感じます。堂々とした富士山の姿も、存在感たっぷり。
■ カクダイ北斎
雄大な自然の風景の中に、小さく描きこまれた人物と馬。簡略化された線でありながら、旅人のちょっとした仕草も丁寧に描写していて、会話を交わしている様子が伝わってきます。
■ ふじさんぽ
作品に描かれている犬目峠は、甲州街道の犬目宿と下鳥沢宿との間にあった峠。具体的な場所は定かではありませんが、今回のふじさんぽスポットは、山梨県上野原市犬目に残る「恋塚一里塚」とさせていただきました。一里塚とは、街道側に一里(約3.927km)ごとに設置された塚。土が盛られたかたちがそのまま残っていて、現在は史跡の看板が立っています。
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作品No.35 「東海道吉田」
「不二見茶屋」と書かれた看板を掲げた茶屋で、旅人たちが思い思いに休息をとっています。茶屋内の細々とした描写が目を引く作品ですが、画面奥には青空が広がり、風通しの良さも感じさせます。
■ カクダイ北斎
姉さまかぶりをした女性。その視線の先には、木々の間からのぞく富士山の頭が。京都方面からの旅人であれば、ここで初めて富士山の姿を望み、小さな感動に浸っているのかもしれません。
■ ふじさんぽ
ここに描かれている富士見茶屋があったのは、東海道の吉田宿の北西、現在の愛知県豊橋市下五井町。茶屋前という地名も残っています。そこで今回のふじさんぽスポットは下五井町の「豊橋魚市場」。富士見茶屋のほか、豊川の河口付近は、19世紀に富士見新田という名前の新田も開発されており、富士山が見える地域として認識されていたようです。ぜひ魚市場周辺で、富士山が見える場所、探してみてくださいね。
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editor's note:今年も残すところあと10日ほど。何かと気ぜわしい年末、今回は、あえてのんびりした雰囲気の作品2点をご紹介させていただきました。大掃除が終わったあとのお部屋に、ほっと心和む富士山の浮世絵はいかがでしょうか?
※ 葛飾北斎の「葛」の字は環境により表示が異なります。また「富嶽三十六景」の「富」は作中では「冨」が用いられていますが、本稿では常用漢字を採用しています。
文・「北斎今昔」編集部
提供・アダチ版画研究所
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