北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜 (5)【PR】
連載「北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜」は、アダチ版画研究所が制作した復刻版で、北斎の「富嶽三十六景」全46図を毎週2図ずつご紹介する企画です。前回の記事はこちら≫
作品No.7 「下目黒」
畑の谷間から富士山をのぞく作品。大きく切り取られた空の青と畑の和やかな緑に、ほのぼのとする風景画です。前回ご紹介した「神奈川沖浪裏」のこちらに向かってくるような迫力とは逆に、遠くに抜けるような風通しの良い作品。お部屋の壁に飾ったら、空間が少し広く感じられるかも。
■ カクダイ北斎
畑の向こうに、控え目に顔をのぞかせる富士山。藍色のグラデーションの中に冠雪した山頂の三角形がくっきり。小さいながら、茫洋とした風景の中心で、画面をばっちりまとめ上げてくれています。
■ ふじさんぽ
画面右下の二人の人物にご注目。二人とも手に鳥を乗せています。そう、彼らは鷹匠。この下目黒一帯は、江戸時代、将軍家の鷹狩りの場所でした。富士山と鷹。つまり、北斎は「富嶽三十六景」の中におめでたい「一富士二鷹」を描いていたんです。目黒不動尊の通称で知られる瀧泉寺には、三代将軍・家光と鷹とのエピソードが伝わる「鷹居(たかすえ)の松」の跡も。ということで、今回のふじさんぽのスポットは「目黒不動尊瀧泉寺」。
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作品No.5 「青山圓座枩」
かつて東京・青山にあった名物松「円座松」。こんもりと小さな山のようになっている画面の緑が松の葉です。幹が上に伸びず、枝が地を這うように横に伸びていますね。
■ カクダイ北斎
円座松をよく見てみると、放射線状に広がる松葉と新芽を意匠化した「唐松模様」と円(水玉模様)の集合体であることがわかります。平面的な模様を並べて風景に仕立て上げてしまう北斎。しかもその中に、庭掃きの小僧さんらしき足がちらり。
■ ふじさんぽ
青山の円座松は、かつて渋谷区神宮前2丁目の禅寺にありましたが、残念ながら被災によりなくなってしまいました。そこで今回のふじさんぽスポットは、円座松があった場所からおそらく一番近い公園「渋谷区立神宮前公園」とさせていただきます。小さな公園ですが、北斎の絵の中の人々のように、藤棚の下で、ちょっとしたピクニック気分は味わえるかも。
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editor's note:今回選んだ2図は、実はお不動様つながり。「目黒」の地名が瀧泉寺の御本尊、目黒不動明王と深い繋がりがあることは有名ですが、円座松のあったお寺の御本尊も、お不動様(黄金目不動明王)なんです。ちなみに目黒不動の縁日は毎月28日。そして、円座松があった場所からすぐの明治神宮外苑、今はいちょうの黄葉が綺麗ですよ。
※ 葛飾北斎の「葛」の字は環境により表示が異なります。また「富嶽三十六景」の「富」は作中では「冨」が用いられていますが、本稿では常用漢字を採用しています。
文・「北斎今昔」編集部
提供・アダチ版画研究所
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