北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜 (1)【PR】
2020年は、江戸の天才浮世絵師・葛飾北斎の生誕260周年。代表作「富嶽三十六景」は、今なお世界中の人々に愛され続けています。連載「北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜」は、アダチ版画研究所が制作した復刻版で、北斎の「富嶽三十六景」全46図を毎週2図ずつご紹介して参ります。現代の職人の手により色鮮やかによみがえった北斎の富士を、どうぞお楽しみください。
作品No.11 「本所立川」
材木置き場から富士山を眺める「本所立川」。彫師泣かせの線、線、線。「富嶽三十六景」の中でも細密な描写が一、二を争う作品です。シャープな線の印象が強いので、オフィスなど仕事場の壁に飾ってもかっこいいかも。画面右下、「西村置場」とあるのは「富嶽三十六景」を出版した版元・西村永寿堂の宣伝なのだとか。
■ カクダイ北斎
束ねられた細長い材木。林立する材木の向こうに、富士山が見えています。垂直線の中に見える青い三角形が、印象深いですね。
■ ふじさんぽ
宝暦10年9月23日(1760年10月31日)、葛飾郡本所割下水(現在の東京都墨田区)に生まれた北斎。「富嶽三十六景」の中で、おそらく北斎生誕の地に一番近い場所を描いているのが、この「本所立川」。画面中央を流れているのは、首都高7号線の下を流れる「竪川(たてかわ)」です。落語中興の祖と呼ばれる、江戸本所の大工の棟梁・立川焉馬(たてかわえんば・1743-1822)が生まれ育ったのも、この竪川の北側。(北斎が描いた材木置き場のイメージは、ここから来ているのかも。)また竪川の南側には「立川(たてかわ)」という地名もあります。
今回は、墨田区立川3丁目にある忠臣蔵ゆかりの地「安兵衛公園」を、「ふじさんぽ」のスポットに選ばせていただきました。すみだ北斎美術館から徒歩10分強の場所。
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作品No.32 「駿州片倉茶園ノ不二」
長らく場所が特定されていなかった作品ですが、近年、静岡県富士市中野の片倉集落を描いたのでは、という説が浮上。富士市の観光にもひと役買っているそうです。お茶が静岡の名産品となるのは、実は明治以降の話。静岡茶のルーツ、早くも北斎が富士山と一緒に描いていたんですね。ぼーっと眺めていられる、のんびりした雰囲気の作品です。
■ カクダイ北斎
長閑な晩春の田園風景。並んで茶摘みに勤しむ女性たちのおしゃべりが聞こえてきそうです。
■ ふじさんぽ
静岡県富士市中野地区の方々には昔から馴染みのあった「片倉」という地名。現在、地図の上にその名称はあまり残っていないのですが、富士総合運動公園内の古墳群に「片倉」の名前が付けられていました。
ということで、今回の「ふじさんぽ」のスポットは「大淵片倉古墳群」。富士総合運動公園からは、きれいな富士山が見えます。北斎の浮世絵も、どこか小高い場所から茶園を見下ろしているような感じですよね。
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editor's note:今回は、10月31日が北斎の260回目の誕生日&「日本茶の日」 ということで、北斎生誕の地に近い「本所立川」と「駿州片倉茶園ノ不二」を選びました。すみだ北斎美術館では、11月8日まで「新収蔵品展 ― 学芸員が選んだおすすめ50 ―」を開催中。あの赤富士、黒富士が展示されていますので、ぜひ! 「駿州片倉」が近年特定されたように、まだまだ発見がある、北斎「富嶽三十六景」。これから約半年をかけてご紹介して参ります。どうぞご贔屓に。
※ 葛飾北斎の「葛」の字は環境により表示が異なります。また「富嶽三十六景」の「富」は作中では「冨」が用いられていますが、本稿では常用漢字を採用しています。
文・「北斎今昔」編集部
提供・アダチ版画研究所
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