北斎さんの富士山 〜復刻版で見る「富嶽三十六景」〜 (17)【PR】
連載「北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜」は、アダチ版画研究所が制作した復刻版で、北斎の「富嶽三十六景」全46図を毎週2図ずつご紹介する企画です。前回の記事はこちら≫
作品No.21 「相州七里濱」
藍色のモノトーンで表現された鎌倉七里ヶ浜。「藍摺絵」と呼ばれる、藍を中心とする寒色系でまとめられた作品です。海外から鮮やかなプルシャンブルーの絵具がもたらされたことにより、浮世絵の風景画の表現の幅は一挙に広がりました。
■ カクダイ北斎
遠くの空に見えるのは入道雲(積乱雲)。このことから季節が夏であることがわかります。やや抽象化された雲の描写が、静かな風景の中のアクセントに。
■ ふじさんぽ
江戸時代には、鎌倉から江ノ島へ向かう途上の風光明媚な浜辺として庶民に知られるようになった七里ヶ浜。歌舞伎の「弁天小僧」の台詞の中にも登場するほどの名所になりました。今回のふじさんぽは、そんな江戸時代から続くおでかけスポット「七里ヶ浜」。現在は江ノ島電鉄が走り、周辺には人気の映画・ドラマのロケ地も多数。
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作品No.12 「武陽佃嶌」
こちらも同じく「藍摺絵」の一枚。最初にご紹介した「相州七里濱」に比べると、緑や黄色など青系以外の色も使用していますが、全体的にはクールな印象の作品です。緩やかに弧を描く水平線は、まるで北斎が地球が丸いことを知っていたかのようですね。
■ カクダイ北斎
様々な形状の舟が浮かぶ東京湾。中景に描かれている浮島のような場所が佃島です。空と海の広大な空間の中心に、どっしりと安定感のある富士山が鎮座しています。手前の舟はまるでミニチュア。
■ ふじさんぽ
佃島は、江戸時代に埋め立てられた人口の島。大阪の佃村の漁民たちが移住してきたため佃島と呼ばれるようになりました。佃島の住吉神社も、彼らの移住とともに、大阪の住吉大社から勧請したものです。今回のふじさんぽスポットは「住吉神社」。3年に一度の本祭りでは、6本の大幟が佃島内に建てられ、御神輿を船に乗せて氏子地域を巡る船渡御(ふなとぎょ)が行われます。
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editor's note:「富嶽三十六景」は全46図。うち36図は輪郭線が藍色で摺られています。シリーズの刊行を告げる西村永寿堂の広告には「冨嶽三十六景 前北齋為一翁画 藍摺一枚一枚ニ一景ッヽ追々出板」とあり、当初「藍摺絵」の連作として出される予定であったことがわかります。さらに「此絵ハ冨士の形ちのその所によりて異なる事を示す、或ハ七里ヶ濱にて見るかたち又は佃島より眺る景など総て一やうならざるを著し」と続き、「相州七里濱」と「武陽佃嶌」は刊行スタート時に揃っていたことがわかります。「富嶽三十六景」の藍摺絵については、こちらの記事もあわせてどうぞ。
※ 葛飾北斎の「葛」の字は環境により表示が異なります。また「富嶽三十六景」の「富」は作中では「冨」が用いられていますが、本稿では常用漢字を採用しています。
文・「北斎今昔」編集部
提供・アダチ版画研究所
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