北斎さんの富士山 〜復刻版で見る「富嶽三十六景」〜 (15)【PR】

北斎さんの富士山 〜復刻版で見る「富嶽三十六景」〜 (15)【PR】

連載「北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜」は、アダチ版画研究所が制作した復刻版で、北斎の「富嶽三十六景」全46図を毎週2図ずつご紹介する企画です。前回の記事はこちら≫

「北斎さんの富士山」の楽しみ方

作品No.24 「相州梅沢庄」

アダチ版復刻浮世絵 葛飾北斎「富嶽三十六景 相州梅沢庄」(画像提供:アダチ伝統木版画技術保存財団)

寒色系の野山に薄紅色の雲がたなびく幻想的な風景。霊峰・富士と七羽の鶴は、吉祥画として見ることも可能でしょう。お祝い事に合わせて飾りたくなる、おめでたい作品です。

■ カクダイ北斎
湘南に鶴? 一説に、江戸時代の人々は鶴とコウノトリを混同していたとも言いますが……いずれにせよ、幸福を運んできてくれる鳥ですね。「富嶽三十六景」では、通常墨(黒)を用いる輪郭線を藍で摺っています。藍色の鶴も乙。

アダチ版復刻浮世絵 葛飾北斎「富嶽三十六景 相州梅沢庄」より(画像提供:アダチ伝統木版画技術保存財団)

■ ふじさんぽ
北斎が描いた梅沢は、現在の神奈川県中郡二宮町。梅沢海岸という地名もあります。今回のふじさんぽスポットは、この梅沢海岸から東海道をはさんで北側に立つ吾妻山の「吾妻山公園」。残念ながら鶴はいませんが、展望台から360度の心地よいパノラマを楽しめます。春には、黄色の菜の花畑と湘南の青い海が広がります。


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作品No.39 「甲州三坂水面」

アダチ版復刻浮世絵 葛飾北斎「富嶽三十六景 甲州三坂水面」(画像提供:アダチ伝統木版画技術保存財団)

河口湖の湖面に映る逆さ富士。湖畔の木々は青々としていますが、水鏡の中の富士山の頭には雪が積もっています。まるでトリックアートのような一図。

■ カクダイ北斎
湖面のツートンカラーの富士山に対して、山向こうにそびえる富士山は、頂上に向かうボカシ(グラデーション)一色で表現。山の険しさや高さが一層強調されていますね。

アダチ版復刻浮世絵 葛飾北斎「富嶽三十六景 甲州三坂水面」より(画像提供:アダチ伝統木版画技術保存財団)

■ ふじさんぽ
作品名の三坂は御坂で、山梨県の御坂峠を指しています。この御坂峠を通って富士吉田市と笛吹市を結ぶ国道137号線は「御坂みち」の愛称で呼ばれ、穴場の富士山ビューポイントも。御坂みち沿いに、北斎作品のアングルに近い場所を探してみた結果、今回のふじさんぽスポットは、河口湖大橋のたもとの「産屋ヶ崎」に。ちなみに千円札に描かれている逆さ富士の元になっているのは、残念ながらこちら河口湖ではなく、本栖湖から見た富士山だそうです。


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editor's note:2月3日は立春。新しい季節の始まりに、おめでたい「相州梅沢庄」を選びました。ファンシーな色遣いが人気の一図です。そしてもう一図は、北斎のイリュージョンが楽しめる「甲州三坂水面」。現代の私たちは、自分自身の視覚体験や記憶よりも、写真が映し出す画像に依拠して世界を眺めているように思います。北斎の浮世絵は、私たちに自由な物の見方を教えてくれるのかもしれません。

※ 葛飾北斎の「葛」の字は環境により表示が異なります。また「富嶽三十六景」の「富」は作中では「冨」が用いられていますが、本稿では常用漢字を採用しています。
 

       
「北斎さんの富士山」連載目次
第1回(2020.10.30)「本所立川」「駿州片倉茶園ノ不二」 第2回(2020.11.06)「遠江山中」「深川万年橋下」□□□□
第3回(2020.11.13)「駿州江尻」「相州仲原」 第4回(2020.11.20)「神奈川沖浪裏」「穏田の水車」
第5回(2020.11.27)「下目黒」「青山圓座枩」 第6回(2020.12.04)「尾州不二見原」「従千住花街眺望ノ不二」
第7回(2020.12.11)「五百らかん寺さざゐどう」「登戸浦」 第8回(2020.12.18)「甲州犬目峠」「東海道吉田」
第9回(2020.12.25)「相州箱根湖水」「東海道程ケ谷」 第10回(2021.01.01)「凱風快晴」「江都駿河町三井見世略図」
第11回(2021.01.08)「駿州大野新田」「東海道江尻田子の浦略図」 第12回(2021.01.15)「東都駿臺」「隅田川関屋の里」 
第13回(2021.01.22)「信州諏訪湖」「甲州伊沢暁」 第14回(2021.01.29)「御厩川岸より両国橋夕陽見」「相州江の島」
第15回(2021.02.05)「相州梅沢庄」「甲州三坂水面」 第16回(2021.02.12)「江戸日本橋」「礫川雪ノ旦」
第17回(2021.02.19)「相州七里濱」「武陽佃嶌」 第18回(2021.02.26)「甲州石班沢」「武州玉川」
第19回(2021.03.05)「山下白雨」「身延川裏不二」 第20回(2021.03.12)「東都浅草本願寺」「常州牛堀」
第21回(2021.03.19)「東海道金谷ノ不二」「武州千住」 第22回(2021.03.26)「東海道品川御殿山ノ不二」「甲州三嶌越」
   
第23回(2021.04.02)「上総ノ海路」「諸人登山」   

 

文・「北斎今昔」編集部
提供・アダチ版画研究所