北斎さんの富士山 〜復刻版で見る「富嶽三十六景」〜 (9)【PR】
連載「北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜」は、アダチ版画研究所が制作した復刻版で、北斎の「富嶽三十六景」全46図を毎週2図ずつご紹介する企画です。前回の記事はこちら≫
作品No.25 「相州箱根湖水」
まるで御伽話の中に登場しそうな、霞たなびく山間の湖畔の風景。全体的に丸みを帯びたフォルムで構成され、優しい色調なので、現代の洋間に、かわいらしく飾れそうです。
■ カクダイ北斎
箱根の山々のあいだから控えめに顔をのぞかせる富士山。山頂の雪の白が、画面の中の重要なアクセントになっています。
■ ふじさんぽ
東海道最大の難所とされた箱根。江戸から京都方面へ向かう旅人たちは、険しい山道を乗り越えた先に広がる芦ノ湖の姿に、ほっと安堵したことでしょう。「箱根湖水」とは箱根の「芦ノ湖」のこと。芦ノ湖の湖畔には箱根の関所がありました。北斎もきっと西への旅の途中に通っているはず。
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作品No.35 「東海道程ケ谷」
細長い松の木の並びが画面にリズムを生んでいます。印象派の画家・モネの「陽を浴びるポプラ並木」の木の表現に、北斎のこの図からの影響が読み取れるとする指摘もあります。
■ カクダイ北斎
ジグザグと踊るような松の木の描線とは対照的に、道中合羽をまとった旅人の描線は流れるよう。彫師は、こうした絵師の筆の線の特徴までを見事に木版画で再現します。
■ ふじさんぽ
画中の「程ヶ谷」は現在の神奈川県横浜市の保土ヶ谷のこと。北斎が描いた松並木は、現在自治体によって今井川沿いに復元されています。今回のふじさんぽのスポットは、この松並木とともに復元された「保土ヶ谷一里塚」。この界隈は史跡の看板なども立っていますので、ぜひ往時をしのびながら、東海道を歩いてみてください。
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editor's note:今年もあと1週間。お正月の箱根駅伝のことを考えながら、今回の2図を選びました。東京の大手町から箱根の芦ノ湖までは100km以上の道のり。マラソン選手は本当にすごいですね。(『東海道中膝栗毛』の弥次さん喜多さんは江戸から箱根まで3日かけて歩いています。)箱根の小涌谷には、肉筆浮世絵の名品を多数所蔵する岡田美術館がありますよ。
※ 葛飾北斎の「葛」の字は環境により表示が異なります。また「富嶽三十六景」の「富」は作中では「冨」が用いられていますが、本稿では常用漢字を採用しています。
文・「北斎今昔」編集部
提供・アダチ版画研究所
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