北斎・広重が浮世絵に描いた桜の名所、2023年東京都内のお花見は?
新型コロナウィルスの国内感染発生から3年余。まだまだ様々な条件付きのお花見にはなりそうですが、今年は各地の桜の下でお花見が楽しめそうです。浮世絵に描かれた花見の名所では、どんなイベントが開催されるのでしょうか。北斎・広重の浮世絵と2023年の東京都内のお花見情報をご紹介します。
【上野】うえの桜まつり
広重が「名所江戸百景」で描いた上野の山は春爛漫。桜に彩られた「上野清水堂不忍ノ池」の風景は、今でもほぼ変わらない景色を楽しむことが可能です。
画面に描かれた朱塗りの建物は、寛永寺の清水観音堂。上野の山は京都の比叡山、不忍池は琵琶湖に見立てられ、このお堂は清水寺に模して造られました。江戸の小さな清水の舞台には、親子連れの姿も見えますね。現在、国の重要文化財に指定されています。
江戸時代、寛永寺の広い敷地だった上野の山は、現在「上野恩賜公園」となっています。上野動物園や東京国立博物館があり、海外からの観光客も多く、老若男女の憩いの杜。
コロナ以前は、毎年お昼のニュースでブルーシートの陣取り合戦が報じられていましたが、今年は清水観音堂前の「さくら通り」の桜は、どうぞ広重の浮世絵同様、歩行しながらお楽しみください。
※宴席可能エリアについては東京都建設局のホームページ(重要なお知らせ「桜花期における公園ご利用にあたってのお願いについて」)を参照ください。
日程:2023年3月17日〜4月9日
※桜の開花状況により変更となる可能性があります。
場所:上野恩賜公園(東京都台東区上野公園・池之端3丁目)
▶︎ 一般社団法人上野観光連盟ホームページ
【御殿山】御殿山さくらまつり2023
北斎の代表作「富嶽三十六景」にもお花見の様子が描かれています。場所は品川御殿山。高輪の海を一望する御殿山の春の情景は、多くの絵師に描かれてきました。江戸時代は、品川駅西側の第一京浜の辺りまで海だったので、御殿山はより海に近かったのです。
青い空、青い海、そして富士山に桜の絶景。これはお酒も進みます。浮世絵の中に描かれた人々も、かなり浮かれていますね。
現在、品川駅周辺は高層ビルが立ち並び、北斎が描いた頃から風景は一変してしまっています。しかし、江戸時代の花の名所の風情を今も楽しむことのできる都会のオアシスがあるんです。それが「御殿山トラストシティ」内に広がる約2000坪の「御殿山庭園」。御殿山庭園の桜のライトアップを中心として、長唄三味線の演奏やお茶会、ワークショップ等イベント盛りだくさんの「御殿山さくらまつり」が4年ぶりに開催されます。
イベントの一部は事前予約制となっていますので、おでかけの前に「御殿山トラストシティ」のウェブサイトでチェックしてください。また桜のライトアップは3月20日から4月9日までとお祭りの会期より長いので、静かに夜桜を楽しみたい方にもおすすめです。
【飛鳥山】北区さくらSA*KASOまつり
続けて北斎の作品より、飛鳥山の桜をご紹介。「新板浮絵王子稲荷飛鳥山之図」と題したこの作品は、飛鳥山全体が桜色に染まる春の雰囲気をよく伝えています。
王子稲荷と飛鳥山は、江戸時代の行楽地であり、周辺には有名料亭もありました。王子の滝野川の渓谷は紅葉の季節も風情があり、浮世絵にも多数描かれています。今も昔も変わらない、江戸っ子の日帰り観光スポットだったんですね。
そんな飛鳥山で、今年は4年ぶりに「北区さくらSA*KASOまつり」が開催されます。飛鳥山公園には、紙の博物館、渋沢史料館、北区飛鳥山博物館の3つの博物館もありますので、花も団子も歴史文化も楽しめる欲張りな1日をお過ごしいただけることでしょう。
また飛鳥山公園は、JR・東京メトロの王子駅に隣接しており各線からアクセスが良いですが、ぜひこの季節に活用いただきたいのが、飛鳥山公園を経由して三ノ輪橋と早稲田を結ぶ路面電車「東京さくらトラム(都電荒川線)」。名称に「さくら」とある通り、車窓から沿線の桜を楽しめますよ。
【小金井】小金井桜まつり
浮世絵には、江戸の各地の花見の賑わいがたくさん描かれています。江戸時代の暦は、現在のように多くの人が休む「週末」が存在しなかったので、ある程度花見客も分散したのだろうとは思いますが、いつの時代も「人出の多い場所の花見はちょっと……」という方は一定数いたようで。そんな心静かに花を愛でたい人々が好んだのが、郊外の桜。広重は「小金井」の桜がお気に入りだった模様です。
素朴な田園風景の中、玉川上水の堤に連なる桜の並木。江戸の中心地で暮らしていた広重は、この郊外ののんびりした空気でリフレッシュできたのかも知れません。広重の心持ちを映し出したかのような夕空のグラデーションがしみじみと美しい作品です。
この小金井の桜並木は、大正期に入り国の名勝にも指定されました。しかし近年、交通量の増加や周辺の高木の成長等、生育環境が悪化したことにより、小金井の桜は危機的な状態にあります。そこで小金井市では「名勝小金井(サクラ)復活プロジェクト」を立ち上げ、かつての桜の名所を復活させるための事業を展開しています。
広重が描いた桜並木の復活を応援しつつ、小金井のお花見を楽しみたい方は、都立小金井公園、江戸東京たてもの園前広場にて開催される「小金井桜まつり」へ。こちらでは、園内約50種1700本の桜を楽しむことができます。約30店舗の屋台の出店や特設ステージでのパフォーマンスなど、幅広い世代が楽しめる小金井恒例の春のお祭り。初日は20時まで開催しているので、広重の浮世絵のような夕暮れも楽しめそうですね。
文・「北斎今昔」編集部
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