北斎さんの富士山 〜復刻版で見る「富嶽三十六景」〜 (20)【PR】
連載「北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜」は、アダチ版画研究所が制作した復刻版で、北斎の「富嶽三十六景」全46図を毎週2図ずつご紹介する企画です。前回の記事はこちら≫
作品No.8 「東都浅草本願寺」
浅草本願寺の屋根、井戸掘りの櫓、そして凧が、富士山と高さを競い合っているような作品。本願寺の屋根の上に描かれた小さな人の姿が、作品のスケール感を強調しています。
■ カクダイ北斎
澄み渡った空に上がっているのは、鳥(鳳凰?)の姿を模した凧。どっしりと安定感のあるモチーフが並ぶ画面の中に、颯爽と風を生み出しています。
■ ふじさんぽ
北斎が描いた浅草本願寺は、浅草かっぱ橋問屋街の近くに建つ浄土真宗のお寺「東本願寺」のこと。明暦の大火(1657年)の後、現在の場所に移転・再建され、以来この地の歴史を見つめてきました。本堂の立派な大屋根は、北斎以外の浮世絵師も描いた浅草エリアのランドマークのひとつでしたが、残念ながら大正12年の関東大震災で全焼しています。
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作品No.44 「常州牛堀」
清澄な朝の空気を感じる藍摺絵の一枚。船上の人が釜から米のとぎ汁をこぼした音に驚いたのか、葦の中から二羽の小鷺が飛び立っています。
■ カクダイ北斎
「富嶽三十六景」全46図の中で最も東に位置する牛堀。霞ヶ浦から、富士山がこんなに大きくはっきりと見えるかは疑問ですが……。
■ ふじさんぽ
常州牛堀は、現在の茨城県潮来市牛堀。霞ヶ浦の東の端、常陸利根川の北岸の一帯です。実はここに、北斎のこの作品にちなんで名付けられた公園が存在します。その名も「水郷北斎公園」。川沿い約1㎞に延びる公園は、絶好の釣りポイントで、夏には水郷潮来花火大会の会場となります。
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editor's note:今年に入ってから「富嶽三十六景」の藍摺絵の作品を多数ご紹介していますが、大変好評です。現代人の心に響くジャパンブルー。けれど、ちょっと時代を先取りし過ぎたようです。「富嶽三十六景」は当初、藍摺絵のシリーズとして構想されていましたが、途中で路線変更することになりました。もし、当初の予定通り藍摺で刊行を続けたら、赤富士はどうなっていたのでしょうか。
※ 葛飾北斎の「葛」の字は環境により表示が異なります。また「富嶽三十六景」の「富」は作中では「冨」が用いられていますが、本稿では常用漢字を採用しています。
文・「北斎今昔」編集部
提供・アダチ版画研究所
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