北斎さんの富士山 〜復刻版で見る「富嶽三十六景」〜 (19)【PR】
連載「北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜」は、アダチ版画研究所が制作した復刻版で、北斎の「富嶽三十六景」全46図を毎週2図ずつご紹介する企画です。前回の記事はこちら≫
作品No.28 「山下白雨」
「白雨」とはにわか雨のこと。青天の山頂に対して、山裾には稲光が走ります。山頂と山裾の気象をがらっと変えることで、標高の高さが際立っていますね。童謡(小学校唱歌)「ふじの山」でも歌われた富士山の姿、モデルはこの北斎の作品と言われています。
■ カクダイ北斎
真っ暗になった富士山の裾野を走る黄色い稲光は、非常にデザイン的。橙色のボカシ(グラデーション)がアクセントになっています。この稲光は、東京・墨田区のすみだ北斎美術館のロゴマークの元にもなっているんですよ。
■ ふじさんぽ
「富嶽三十六景」全46図のうち、題名に地名が入っていない3図のうちの1図。今回のスポットはズバリ「富士山」です。第10回でご紹介した「凱風快晴」(赤富士)とほぼ同じ構図でありながら、かたや真っ赤、かたや真っ黒。さらに南風(凱風)と雷雨という対照的な気象から、この双子のような赤黒の富士山を、風神・雷神の見立てと見るユニークな見解もあります。いろんな見方ができますね。
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作品No.42 「身延川裏不二」
旅人や馬が往来する明るい山間の街道に対して、富士川の流れを挟んだ向こう側は、一種近寄りがたい雰囲気です。霧煙る険しい山々には、仙人が住んでいそう。
■ カクダイ北斎
本作の富士山は、ゴツゴツした険しい山の間にかくれんぼ。同じ町内には、現行の千円札や旧五千円札のデザインに起用された富士山(写真作品)の撮影地(本栖湖畔)もあるのですが……ちょっと天邪鬼な北斎です。
■ ふじさんぽ
山梨県身延町は、富士山の西側に位置する町。町の中心を南北に富士川が流れています。山梨県の甲府から静岡県の興津までを結ぶ身延道(みのぶみち)は、この富士川の西岸沿いに発達し、身延山にある日蓮宗の総本山、久遠寺に参詣する人々も利用しました。日蓮宗を信仰していた北斎も、身延道を通り久遠寺を訪れたかもしれません。今回のふじさんぽスポットは「身延山 久遠寺」。
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editor's note:今回は、中国の秘境めいた雰囲気をまとった富士山2図をピックアップしました。ゴツゴツした山肌や雲の描写に、中国の山水画の影響がうかがえる2図です。北斎は「富嶽三十六景」において、江戸から見た富士山は比較的アイコニックな三角形で描いていますが、富士山に近い場所では、山岳としての威厳を強調しているように思います。
※ 葛飾北斎の「葛」の字は環境により表示が異なります。また「富嶽三十六景」の「富」は作中では「冨」が用いられていますが、本稿では常用漢字を採用しています。
文・「北斎今昔」編集部
提供・アダチ版画研究所
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