北斎さんの富士山 〜復刻版で見る「富嶽三十六景」〜 (13)【PR】
連載「北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜」は、アダチ版画研究所が制作した復刻版で、北斎の「富嶽三十六景」全46図を毎週2図ずつご紹介する企画です。前回の記事はこちら≫
作品No.37 「信州諏訪湖」
神秘的な青のモノトーンの諏訪湖。北斎は「富嶽三十六景」刊行のおよそ10年後、信州の小布施を数回訪れた記録が残っています。諏訪湖にも足を運んだのでしょうか?
■ カクダイ北斎
中景の湖畔に見えているのは「諏訪の浮城」と呼ばれた諏訪高島城。湖に突き出した水城で、日本三大湖城のひとつに数えられます。浮世絵では、日本橋の風景に富士山と江戸城を描くのが定番ですが、北斎はここ諏訪でも富士山とお城を組み合わせました。
■ ふじさんぽ
空気も水もきれいな諏訪盆地は「東洋のスイス」と呼ばれています。そうした環境から、諏訪湖周辺は、戦後、精密器械産業がさかんに。北斎がさわやかな藍摺によって描き出したかったのは、そんな清廉な空気だったのかも知れません。本日のふじさんぽは「諏訪湖」。
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作品No.38 「甲州伊沢暁」
朝焼けの中、黒々としたシルエットが印象的な富士山。富士山の北、山梨県笛吹市の石和(画中の文字は伊沢)の風景を描いた作品です。画面中央を流れるのは笛吹川。
■ カクダイ北斎
五街道のひとつ、甲州街道にあった石和の宿場。旅人たちが出立する姿が画面の下部に小さく描きこまれています。明けゆく空と町並みの明暗を、ボカシ(グラデーション)の技で丁寧に表現していますね。
■ ふじさんぽ
いまや山梨県最大の温泉郷である石和は、新日本観光地100選にも選ばれている観光地。北斎が生きていた時代はまだ温泉が湧いていませんが、謡曲「鵜飼」の舞台になった遠妙寺をはじめ、史跡も多数。今回は、そんな見所だらけの石和の町でひと休みできる公園、甲斐・武田家の家臣、八田氏にゆかりのある「八田御朱印公園」をふじさんぽのスポットとさせていただきます。
※ 1月22日現在、笛吹市の文化施設では、新型コロナウイルス感染拡大防止のため「緊急事態宣言対象区域にお住まいの方及び過去2週間以内に感染が拡大している国への居住・訪問歴のある方につきましては、ご観覧をお断りしています。」(笛吹市ホームページより)八田御朱印公園内にある文化財・八田家書院も含まれます。お出かけの際は最新の情報をご確認ください。
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editor's note:全面氷結した湖面の一部が盛り上がり、何かが通った跡のようになる諏訪湖特有の現象「御神渡り」。今年は三季ぶりに「御神渡り」が見られる可能性が出てきているそうです。そんなニュースを耳にした今週は、藍摺の「信州諏訪湖」を。そして冬と言えば温泉、ということで「甲州伊沢暁」を取り上げました。
※ 葛飾北斎の「葛」の字は環境により表示が異なります。また「富嶽三十六景」の「富」は作中では「冨」が用いられていますが、本稿では常用漢字を採用しています。
文・「北斎今昔」編集部
提供・アダチ版画研究所
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