1979(昭和54)年、アダチ版画研究所は、伝統木版の技術を後世に伝えるためには過去の浮世絵を復刻するだけでなく、時代にあった「現代の浮世絵」を作ることも不可欠であると考え、「伝統木版と現代の絵師の出会い」をコンセプトに、オリジナル木版画集『木版と現代』を制作出版しました。また、近年力を入れている国内外で活躍する現代アーティストとのコラボレーション、そしてオリジナル木版画制作の礎となっているのが、この『木版と現代』です。
当時第一線で活躍されていた粟津潔·勝井三雄·田中一光·山藤章二·和田誠の5人のデザイナー·イラストレーターの方々がこの企画に賛同いただき、アダチ版画研究所の職人たちとオリジナル木版画を制作しました。このプロジェクトで完成した作品は、「木版&現代」展としてリッカー美術館(現・公益財団法人平木浮世絵財団)で開催され、大きな注目を集めました。
今回は、5人の中のお一人、イラストレーター·和田誠氏(2019年ご逝去)が外国映画に登場する名優を中心に描いた「六星座」シリーズをご紹介します。どうぞお楽しみください。
撮影:吉田宏子
1936年生まれ。グラフィックデザイナー、イラストレーター。
59年多摩美術大学卒業、ライトパブリシティに入社。68年からフリー。77年より「週刊文春」の表紙を担当して現在に至る。74年、講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。84年、映画「麻雀放浪記」を初監督。現在まで4本の監督作品がある。89年ブルーリボン賞、94年菊池寛賞、97年毎日デザイン賞、15年日本漫画家協会賞特別賞ほか、受賞多数。出版した書籍は200冊を超える。
木版画となった「六星座」シリーズでは、「カサブランカ」のハンフリーボガード、「私生活」のブリジット·バルドーといったように、映画に精通した和田氏らしく、各役者そしてその役柄の特徴を十分に捉えて描いています。 誰を描いても、常に優しく、温かい、和田氏の人柄がにじみ出た似顔絵は、見る人を和ませてくれます。
また、和紙という伝統木版特有の素材を用いることで生まれた穏やかな色と柔らかな質感が和田氏独自の世界観と見事に融和した作品となっています。
収納帙(外寸):40.5×29.0×1.8 cm
額1点付き
価格 ¥198,000(税込)