どうすれば絵の中で着物の美しい「染め」の表現ができるのか?日本画材で試行錯誤している時に、浮世絵を見て、色ムラのない「摺り」の美しさに惹かれました。これは、着物の型染めに通じるところがあると思い、アダチUKIYOE大賞に応募しました。今春、大賞を受賞し、木版画の限られた線と美しい面で表現される世界を、自身の作品で見てみたいという思いがこのたび、叶いました。
現代の浮世絵師として初めて木版画に
挑戦した宮﨑優氏。
シンプルな描線で描かれた女性の輪郭。
松煙染の浴衣に描かれた
美しい牡丹の模様。
木版ならではの滑らかな線で
描写された髪の毛。
滑らかで、優美な筆遣いを感じながら
忠実に彫られた版木。
歌麿などの浮世絵美人画と同様、
和紙の柔らかな質感をそのまま利用し、
顔や手の肌を表現する。
絵の左下に摺られた宮崎氏の落款。
欄外に作家の
直筆サイン入り。
浮世絵版画の魅力の一つである省略美。宮﨑氏は、絵師としてシンプルな線から生まれる美を追求し、下絵を制作されました。彫師は、その絵師が線に込めた思いに寄り添いながら、繊細な線を生き生きと彫りあげていきます。
浮世絵の美人画では、女性の顔や手などの肌の部分には色を加えず、和紙の柔らかい肌をそのまま活かして表現されます。顔の輪郭を繊細に見せるための薄墨や口元の淡い紅が和紙の柔らかさとあいまって、艶やかな女性の表情を生みだします。
1973年大阪市生まれ
大阪府立港南高等学校美術科卒業。2011年に初の個展を開催。鉛筆・色鉛筆・アクリルと様々な画材で制作を続け、2015年より独学で日本画の制作を始める。2016年に画集「美人画づくし」に掲載されるなど美人画作品の発表を重ね、2018年3月に「第9回アダチUKIYOE大賞」大賞受賞。2018年10月に宮﨑優展「兆し」(ギャラリーアートもりもと)開催。無所属。