今回のテーマは、世界文化遺産に登録された日本の象徴・富士山。その秀麗な姿は古より浮世絵をはじめ、多くの芸術の題材となってきました。本作は、草間彌生さんが初めて富士と間近に対峙し、心を動かされ、一気に描きあげたものです。悠々と裾野を広げてそびえる孤高の富士の姿からは独立峰の存在感、溢れるような生命力が伝わってきます。
『水玉の女王』草間彌生さんの
手が一心不乱に、青空を
無数の水玉で埋めていきます。
© YAYOI KUSAMA
表情の違う水玉を彫りわける、
彫師の腕の見せどころです。
草間さんの筆遣いを感じながら、
水玉の中に埋没し一体となり
彫りあげた版木。
青空を覆い尽くす
14,685個に及ぶ
草間のトレードマーク・水玉。
力強い筆致で描かれた
山の輪郭が、富士の壮大さを
感じさせます。
ご機嫌に笑う太陽には、
黄金に輝くよう
本金が使われています。
摺師が調合した
木版画独自の鮮やかな色彩で
一枚一枚摺り上げていきます。
人間国宝・岩野市兵衛が
特別に漉いた、紗漉き最大限の
大きさの和紙(越前生漉奉書)。
『水玉の女王』と呼ばれる草間さんの水玉模様は、無限に増殖する水玉の中に自分が埋没していく自己消滅の象徴。実に14,685個にも及ぶ空の水玉の彫に挑んだ若手彫師の岸は、水玉一つ一つの表情の違いに作家の筆遣いを感じながら、水玉の中に埋没し一体となって版木を彫りあげました。
草間さんが常に目指し続ける『想像を超えるような新しい作品』を作り出すべく、アダチ版画が挑戦した七色の山肌の色合い。若手摺師の京増が調合した木版画独自の鮮やかな色彩への感動を、作家が即興で詩に詠むなど、作品として新たな飛躍が生まれるコラボレーションとなりました。
© YAYOI KUSAMA
1929年、長野県松本市生まれ。
10歳の頃より水玉と網模様をモチーフに幻想的な絵画を制作。28歳で単身渡米、60年代後半にはN.Y.にてハプニングを行うなど前衛芸術家としての地位を築く。73年帰国。93年「第45回ヴェネツィア・ビエンナーレ」に代表作家として日本館初の個展を行う。近年、大規模な個展が世界の有名美術館を巡回し、各国で高い評価を得ている。
絵のみ¥800,000(税別)
専用額付き¥840,000(税別)