"必要なものを残し、余分なものを切り落としていく”Editor”。本作品に付けられたサブタイトル”Cutaway”は、余分な部分を版木から彫りさり、必要な線だけを残していく木版画の手法と本作品の共通点が示唆されています。
膝に抱えた植木鉢から伸びる枝を剪定するエディター。枝の先に描かれた眼は、フランチェスコ・デル・コッサによる”シラクサの聖ルチア”から引用されており、真実を見極めるためのもの。そして植木鉢の中の石は、金を見分けるための石。”真理に近づくために、本当に必要なものを見極める”エディターの姿を描いています。
ジーン氏が
独特の美しい線で
女性像を描いていきます。
ジーン氏が描いた作品の
ラフスケッチ。
ジーン氏の描いたアウトラインが
滑らかな凸線となって
彫りあげられていきます。
彫り上がった主版の版木。
ジーン氏の美しい描線が
忠実に再現されています。
摺師が調合した木版画独自の
鮮やかな色彩で
一枚一枚摺り上げていきます。
人物像に施された
微妙なニュアンスの
グラデーション。
本作のために特別に加えられた
背景の白い部分の空摺りが
作品に立体感を与えています。
人間国宝・
岩野市兵衛が漉いた、
楮100%の手漉き和紙
(越前生漉奉書)を使用。
日々森羅万象と向き合い、その独特の世界観を美しい線で自在に描いていくジェームス・ジーン氏。彫師は、絵師であるジーン氏の意図を読み解きながら、その優美で滑らかな線をリズミカルに彫りあげていきます。小刀一本で繊細な線を彫る作業は、彫師が最も高い集中力と精度を求められる場面です。
伝統木版画特有の軽やかで鮮やかな発色は、丁寧に作られた楮の和紙に水性絵具を馬連を使って摺りこむことで生まれます。摺師は、ジーン氏と彼の描いた"The Editor"の世界観を感じ取りながら、色を調合し、摺り重ねていきます。
幅広いジャンルにおいて多面的なアプローチで創作活動を展開するジェームズ・ジーン。台湾で生まれ、現在はロサンゼルスを拠点とするジーン氏は、ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、香港、そして東京などで開催される美術展に参加するなど、世界を舞台に活動されています。
ジーン氏は、現代的なテーマを中国、日本、ルネッサンスなど伝統的な美術や様式と融合させ、彼だけの宇宙的な世界、神話のように壮大な世界を描きだし、人々を魅了していますが、その活躍の場は、2008年のファッションブランドプラダとの革新的なコラボレーションを始め、2018年アカデミー賞を受賞した話題の映画『Shape of Water』のポスター制作、そして同じく2018年にふたたびプラダとコラボレーションするなど、様々なジャンルにわたります。