本図は、「沙月(さつき)」という実在の女性を描いた美人画です。池永氏は、モデルとなる女性の特徴を描き分けていますが、どの作品にも共通した作家独特の様式美を見ることができます。端正な顔立ちをした現代の美女が物憂げな表情を浮かべ横たわる様子を描いた本図は、その様式美を残しながら、肉筆作品とは異なる池永氏の新たな美人画の世界をご堪能いただける作品です。
撮影=川本聖哉
現代の美人画絵師・池永康晟氏が
魅惑的な女性を
描き出します。
「散菊」のように、
今にも儚く散ってしまいそうな
物憂げな表情。
衣服に浮かび上がる
美しい菊の模様。
木版ならではの
滑らかな線で描写された
髪の毛。
池永氏の柔らかで優美な
筆遣いを感じながら
忠実に彫られた版木。
歌麿の美人画と同様、
和紙の柔らかな質感を
そのまま残すことで
顔や手の肌を表現。
絵の右下部分に押された
池永氏の落款。
欄外に池永氏の
直筆サイン入り。
美人画において輪郭線は、その人物の表情をつくりだす上で重要な役割を担います。彫師は、堅い山桜の版木に池永氏が描いた滑らかな線を忠実に彫っていきます。歌麿の美人画と同様、髪の毛の生え際が彫師の腕の見せどころでもあります。
女性が体にまとう洋服の柄や寝そべる布のテキスタイルは、比較的平らに。美人画の見どころとなる目や唇の部分には、柔らかい妖艶な表情が生まれるよう木版が得意とする「ぼかし」の技術を駆使しています。女性の肌は、和紙の柔らかさをそのまま生かしています。
撮影=川本聖哉
1965年大分県生まれ。
1984年大分県立芸術短期大学付属緑丘高校美術科卒業。その後、独学で様々な素材に岩絵具を置き試行錯誤を繰り返し、独自の技法で日本画を描く。物憂げな表情の女性を描く美人画絵師として国内外のアートフェアにも出品し、人気を博している。2014年には、池永康晟画集「君想ふ百夜の幸福」(芸術新聞社)を発行。