数々の名作を世に送り出した天才浮世絵師・北斎が、染小紋のために描いた絵手本、『北斎模様画譜』。1986年、この『北斎模様画譜』の版木が、海を隔てた米国・ボストン美術館の収蔵庫の中で発見されました。これらの古版木は日本に里帰りし、伝統的な木版画の技術を受け継ぐアダチ版画研究所の職人たちによって再び摺られることとなります。
こうして初版から150年近い歳月を経て再摺された『北斎模様画譜』の公開をきっかけに、北斎のモダンで巧妙なデザインは再び世間の注目の的となり、現代のクリエイターたちの心をも刺激しました。
1987年、アダチ版画研究所は、この北斎のセンスに共鳴した3名の日本のトップデザイナーを迎え、「甦る北斎模様」と題した企画を発表。浅葉克己氏、佐藤晃一氏、松永真氏のそれぞれが、『北斎模様画譜』に掲載された紋様を再構成し創造した世界を、ぜひ木版画でお楽しみください。
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> 浅葉克己「北斎さんの色メガネ 1・2」
> 佐藤晃一「サイコロ/奴さん」
> 松永真「DEEPSEA/MOON/CUBE」
> 「甦る北斎模様」全7図セット
1940年神奈川県生まれ。桑沢デザイン研究所、ライトパブリシテイを経て、1975年浅葉克己デザイン室を設立。アートディレクターとして、日本の広告史に残る数多くの名作ポスター、コマーシャルを制作する。代表的な作品に、西武百貨店「おいしい生活」、長野オリンピック公式ポスター、民主党ロゴマークなど。東京TDC賞、毎日デザイン賞、日本アカデミー賞最優秀美術賞など受賞歴多数。
浅葉克己氏は、『北斎模様画譜』の各頁に並ぶ2つの円形を、メガネのレンズに見立てました。モノクロの北斎模様に、RGBカラーモデル(コンピューターやテレビのディスプレイで使用される)の三原色(赤・青・緑)を配色。作品タイトルにまで、ユーモアが滲み出ています。
1944年群馬県高崎市生まれ。グラフィックデザイナー。東京芸術大学美術学部工芸科ビジュアルデザイン専攻卒業。資生堂宣伝部を経て、1971年に独立。東京ADC最高賞、毎日デザイン賞、芸術選奨文部大臣新人賞や、ニューヨーク近代美術館(MoMA)ポスターコンペ一席をはじめ多数の国際ポスターコンペで受賞。作品は国内外の多数の美術館に所蔵されている。2016年5月没。
作品「サイコロ」は『北斎模様画譜』の各頁に並ぶ円形を、サイコロの目に見立てたもの。ポップな色彩と展開図というアイディアはおもちゃ絵のような遊び心にあふれています。また「奴さん」は、浮世絵の「空摺(からずり)」の技法を前面に押し出した実験的な作品。一見、真っ白な奴さんは、よく見ると和紙の表面に、立体的に模様が浮き出ています。
1940年東京生まれ。1964年東京藝術大学美術学部デザイン科卒。資生堂宣伝部を経て、1971年松永真デザイン事務所設立。主な仕事に、資生堂のサマー・キャンペーン、ベネッセ、ISSEY MIYAKE、国立西洋美術館などのCI計画。ドローイングや彫刻、モニュメントまで広範囲な活動を行う。 世界各国90カ所の美術館などに多くの作品が永久保存。東京ADC賞、毎日デザイン賞など受賞多数。
北斎が考案した模様を立体に起こした松永真氏。北斎模様の連続性を利用し、モダンな建造物のように、漆黒の背景に浮かび上がらせました。使用する色の数を最小限に留め、濃淡やグラデーションによる陰影画法で表現された画面は、非常に洗練されています。
収納帙付き
価格 ¥269,500(税込)